【不動産のヒント】媒介契約について【買う人編】


今回は媒介契約について解説致します。

不動産業者と利用者の間で締結される媒介契約には三種類(専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約)あります。

売る方にとってどの様な違いがあるのかについては様々なサイトで解説されているのですが、買う方にとってどう違うのかあまり説明されていない様です。

そこで今回は、『媒介契約について【買う人編】』を投稿させていただきます。

媒介契約がどのようなものかというよりも、媒介契約の種類がどの様に買う人に影響するかについての記事になります。

もともと媒介契約自体が、売る方との間でのみ交わされていた様で、買う方とも契約するようになったのは、比較的近年のことの様です。

その証拠に、各不動産協会などがつくっている媒介契約書の雛型は、買う人にとって関係のない項目がたくさん並んでいます。

たとえば、物件に対する反響について一定期間ごとに業者が相手方に報告するなどという項目がそれです。

物件への反響は、売主にとってはマーケットがその不動産をどの様に受け止めているか知るための材料となりますが、買主にとってはなんの意味もありません。

検討している段階では他の反響がどれくらいあるかわかると参考になると考える買主さんもいらっしゃるかもしれませんが、買主と不動産業者が媒介契約を締結するのは、物件を申し込む時か、不動産を購入する時になるため、やはり時系列的に意味を持ちません。

では、媒介契約の種類は買主にとってどの様な違いがあるのでしょうか。

全く違いはありません。

厳密に言うと期間の問題など多少の違いはありますが、全く同じと考えて大丈夫な程度です。

しかし、意外と、この違いに引っかかっている買い主様が多いものです。

それが今回記事を書く理由です。

物件をお探しのお客様から、「あの土地は専属専任媒介契約と聞いたけれどその業者から購入しなくてはいけないのか」とか、「他の不動産業者から、売主と専任媒介契約をしているので、うちからしか買えないとか、申込みに有利と言われた」と相談を受けることがあります。

しかしいずれの場合も、その業者を選ばなくてはならない理由にはなりません。

売主と不動産業者がどの様な媒介契約を交わしていたとしても、宅建業法上、物件を預かった業者は業界で共同利用しているサイトへ登録し、物件の情報を公開しなくてはなりません。

そのため専属専任契約をしている不動業者以外からも購入することが出来ます。

また、専任媒介契約をしている業者に申し込むと、有利に不動産が購入できるというのも明らかな間違いです。

むしろ、売主と直接つながっている業者に申し込むことは、買主にとっては大きなリスクとなります。

それは、売主と買主の間にひとつの不動産業者しか入らないことになるからです。

利益相反という言葉をご存知でしょうか、売主と買主はまさに利益が相反する立場にあります。

売主は高く売って余計な義務を負いたくないと考えているのに対し、買主は安く買って問題が起こった際には売り主が責任をとってくれるような契約を結びたいと考えているはずです。

よほどの人格者でない限り、その間に入って両者にとっての最善を目指すことは出来ないでしょう。きっと売主と買主が妥協できる接点を探し、うまくまとめてしまおうと考えることでしょう。

金額交渉ひとつとっても、どこまで安くなるかと買主の立場に立って必死で交渉するのと、売主との関係性を重視しながらやんわりと交渉するのでは結果も随分異なるはずです。

それでも金額についてなら一般の方にも分かりやすいものですが、これが契約書の内容になると、一体どちらに有利なのか、多くの方には全くわからないものでしょう。

これから不動産の購入をお考えの方は、その物件の売主が不動産業者とどの様な契約を交わしているか、あまり心配なさらずにご検討くださいませ。

しかし、一点、気をつけておいて頂きたいことがあります。

それは「囲いこみ」です。

売主と媒介契約を結んだ業者の中には、宅建業法を守らずに物件を定められた方法で公開せず、自社で囲いこんでしまう会社があります。

数年前に雑誌でも相当取り上げられましたが、その際には、名前の通った大手企業の殆どが囲いこみを行っていました。

雑誌の調査によると、不動産業者の名前をつかって問い合わせをした際に商談中と返答された物件について、30分後に消費者として問い合わせるとその多くがご紹介可能と伝えられたそうです。

囲いこみは多くの場合、法律違反です。

よく、「御社しか持っていない物件の情報はありませんか」と問い合わせを頂きますが、この様な問い合わせは多くの場合、「御社は法律違反をしている会社ですか」という問い合わせと殆ど同じ意味になります。

法律違反や、コンプライアンス違反をしている業者が、将来あなたを守ってくれるはずがありません。

一生に一度かもしれない買い物を、そんな会社に頼んで大丈夫でしょうか。

ぜひお気をつけくださいませ。

補足:「一般媒介契約」の場合には、売主からお預かりした物件の情報を仲介業者が公開する義務はありませんが、囲い込みをしてまで利益を優先するタイプの業者が、売主に対する縛りの少ない「一般媒介契約」を結んでいる事は無いでしょう。情報の隠匿が合法である事は稀です。