自宅を売却した場合における税の特例について(3000万円控除)


個人が自己の居住用家屋とその敷地を売却した際、一定の条件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例(租税特別措置法第35条)があります。この特例を利用するためには、売却した家屋が実際に「居住の用」に供されていたことが条件となりますので、お気をつけください。

詳しく説明いたしますと、「居住の用」に供されたと認められるには、以下の基準が必要です。

真に居住する意思を持ち、客観的に見てある程度の期間、継続して生活の拠点としていたこと。
※住民票の移動だけでは「居住の証拠」として不十分で、生活の実態が求められます。

申請された方の中には、この要件が満たされないとして3,000万円控除が認められなかった事例(令和3年4月2日、国税不服審判所の裁決)がありますので、簡単にその際のいきさつなど説明させていただきます。

経緯

賃貸していたマンションを自宅に転用し、短期間の後に売却。
売却前に住民票をマンションに移動し、3,000万円控除を適用して確定申告を行った。
しかし、税務調査で「居住実態がない」とされ控除が否認。さらに、住民票の移動が「仮装」と判断され重加算税が課税されました。

審判所の判断ポイント

電気・ガス契約が結ばれていなかった。
水道使用量が異常に低かった。
短期間の利用で、実際の生活拠点として認められる状況ではなかった。
控除目的で住民票を移したと判断され、「仮装」と認定。


教訓と注意点

控除要件の確認: 単に住民票を移すだけでなく、客観的な証拠(光熱費、生活の実態など)を示す必要があります。
専門家への相談: 自己判断で進めず、税理士や不動産コンサルタントに確認することが大切です。
短期的な利用のリスク: 短期間の居住や形式的な対応では適用が否認される可能性があります。

控除を受けたい場合は、具体的な条件を満たしているかを慎重に検討しましょう。